【意味がわかると怖い話】息が続く限り

意味が分かると怖い話

警察署の一室で刑事がスマートフォンの動画を見ていた。
ある水難事故に関する証拠品である.

画面には若い男女と小学生くらいの少年の3人が映っていた。
男性は緊張した面持ちで画面を見つめ、女性は少年を両腕で抱きしめていた。
「どなたかこの動画を見られたら、どうか警察に届けてください。
私たちは海岸近くの洞窟を探検していました。
細い洞窟内をしばらく奥へと進んだ時に、急に強い地震に見舞われてしまったのです。
海水がすごい勢いで洞窟内に流れ込んできて、慌てて洞窟の奥の方へと避難しました。
不幸中の幸いといいますか、奥の方の空気溜まりになっている小さな空間にたどり着きました。
スマートフォンは電波が届かず救助を呼ぶことはできません。
もと来た通路は水没してしまい、水に潜らなければ入り口まで戻ることはできないようです。
とてもじゃないが息が続かないでしょう」

男性はコンビニのレジ袋と中身のないペットボトルを両手に持ち、画面に向かって差し出した。

「持ち物はほとんどなくて、役に立ちそうなものはこのレジ袋とペットボトルぐらいです。
これに空気を溜めて口に当てがい、酸素ボンベ代わりにして水中を入り口まで進めないかと考えています。
しかし、これだけでは人数分に足りていません。
さらに悪いことに、この空洞の水位が少しずつ増しているようです。
ゆっくり悩んでいる時間はなさそうです」
画面が男性の足元を映した。
もう足首のあたりまで水に浸かっていた。

その時、少年が声をあげた。
「ねえ見て!これ落ちてたんだけど使えないかな」
画面が少年の手元にズームアップした。
しぼんだビーチボールだった。
女性がそれを受け取って空気を吹き込むと、ボールが膨らんで弾力を取り戻した。
「うん、空気は漏れてないわね。使えるわ!」
女性が安心したような明るい調子で言った。
このボールに空気を溜めてボンベとして使えば、3人分の呼吸が確保できたことになる。
それを聞いた男性は、覚悟を決めたようにうなずいた。

動画はここで終わっていた。
刑事は腕組みをしながら眉間にシワを寄せて考え込んだ。
長年の刑事の勘が違和感を告げている。
この動画は何かがおかしい・・・

ポル子
ポル子

あわわ、洞窟に閉じ込められちゃったのね。

ナゾおじさん
ナゾおじさん

水位が上がってきて、急いで脱出しないと溺れてしまいそうだ。

ポル子
ポル子

レジ袋とペットボトル、ビーチボールに空気を溜めて呼吸を確保するつもりみたい。

ナゾおじさん
ナゾおじさん

水没した洞窟を潜って脱出するって怖いよな。途中でパニックになりそうだ。

ポル子
ポル子

それでも男の人、女の人、子供の全員分のアイテムが見つかってよかったわね。なんとか頑張るしかないわ。

ナゾおじさん
ナゾおじさん

全員分か。なんか嫌な予感がするんだよな。

ポル子
ポル子

???

↓↓↓解説↓↓↓

 

 

 

 

 

【解説】
この現場にはもう1人、スマートフォンで動画を撮影している人物がいた。
女性は両手で少年を抱きしめており、男性は左右の手にレジ袋とペットボトルを持っていることから、両手がふさがっている彼らが自分の手でスマートフォンを持って自撮りしているわけではない。
また、画面が男性の足元を映したり少年をズームアップしたりと複雑な動きをしているので、スマートフォンを三脚に固定するなどしていたのではなく、実際に手に持って操作をしていた人物がいたのだ。
つまりこの洞窟に閉じ込められた人物は4人いたことになり、ボンベの代わりに使えるレジ袋、ペットボトル、ビーチボールだけでは3人しか脱出できない。
男性が最後に見せた覚悟を決めた表情は、誰か1人を置き去りにする覚悟をしたのかもしれない。

※この文章はフィクションです。実在の人物・団体・出来事などとは、一切関係ありません。

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